恋人以上、永遠の主人

那月

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羅刹とカレス

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「羅刹、もういいんですよ。もうやめてください。終わりにしましょう」


「く、うっ、やめろ!来るな!来るなァッ!!」


 一気に腕を引き抜かれ崩れ落ちるマクベスの体を、人間の姿に戻ったあたしが支える。血が止まらない。神の力のせい?


 引き抜いた反動でフラつき岩の壁にもたれかかる。弱りきって攻撃を繰り出す力もないのか、1歩ずつ歩み寄ってくるカレスから逃れようと地を蹴る。もうこれ以上、下がれないのに。


 やがて伸ばされたカレスの左手は羅刹の右手に触れ、触れた所からパァッと元の人間の手に戻っていく。


 カレスの右手が羅刹の炭になっている左手に触れると、それすらもまた元の人間の手に戻っていく。


 羅刹はカレスを心から恐れた。逆に、カレスは全く恐れずに勇気を手に入れている。自分の“治す”力を信じている。


「世界のバランスを保つために悪として生まれた神、羅刹。他の神々の影を担ってきて苦しいことも辛いこともたくさんあった。でも、この世界が大好きだよね」


 人間の手に戻った羅刹の両手を握りまっすぐ銀色の瞳を見つめるカレス。握っている手に力を籠めればさらにカレスの力が広がっていき、どんどん羅刹が人間の、本来の姿に戻っていく。


 彼は羅刹の一部。羅刹の記憶も思いも共有している。だからこそ辛かったことも楽しかったことも、今なら自分のことのようにわかる。


 羅刹の、唯一の理解者。毎日いろんなことが起こるけど、カレスはこの世界が大好きだって言っていたことがある。


 それは羅刹の想いでもあるのよね。この世界を好きなのは羅刹も同じ。そんな羅刹が良心を失ったってだけでどうして世界を滅ぼそうと考えてしまうようになったのかは謎。


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