恋人以上、永遠の主人

悪鬼羅刹

８P

　刀身をつかまれヒビが入り、体が引きちぎられそうになる。っていうか本当にちぎれちゃう！


　わざと見せつけるようにマクベスの目の前で鬼斬り丸を握り、まるでぞうきんを絞るように捻る。少しずつ力を入れていって、ヒビが広がっていく。


「くっ……あ、うぅ、ぎ……あぁぁぁっ！！」


「見ろ。お前はまた、誰も救えないんだよ」


「やめろぉぉぉおおおぉぉぉぉおぉぉぉッ――！！！！」


　マクベスは懸命に手を伸ばしてくれた。あたしを助けようと泣き叫びながら伸ばされた手は、けれど届かない。指先が触れる前に一気に力を入れ、鬼斬り丸は２つに折られた。


　力が抜ける。鬼斬り丸を保てなくなって人間の姿で床に倒れたあたしは、起ったことを受け入れられずにただ、腹部から流れる血が大きな池を作るのを見ている。


　体が、上半分と下半分で分かれちゃってる。あたし…………死んじゃうの？


「今ここに長き契約を譲渡、断つ！あいつの名前を呼べ、お前が新しいあいつの主人だ！早くしなさい、間に合わなくなる、あいつが消えてなくなってしまう前に……マクベスッ！！」


　晴明様の声が聞こえる。今まで聞いたことのないほど焦った、早口な晴明様。


　マクベスの手に何か白い紙を握らせている？一緒にいたはずのナナシ君は果敢にも羅刹の前に立って鬼の右腕を振り上げているし。


「せ、い、めい様……？晴明様！ナツメが……ナツメが、羅刹にっ……ナツメェェェッ！！」


　目の前で最愛のあたしが殺されかけ精神崩壊寸前のマクベスの肩を揺さぶり、晴明様は何としてでもあたしの名前を呼ばそうとした。


　結果、錯乱中に偶然叫んだわけだけど。その瞬間あたしは消えた。