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酒吞童子と茨木童子
13P
しおりを挟む「先に行けよ、あとは俺達がなんとかしてやる」
それはまるでデジャブ。ミチカさんのビルから脱出する時に酒吞童子と茨木童子に突き飛ばされた、あの光景が脳裏によみがえる。やっぱり親子なのね。
「待って。君はどうして、俺達に協力してくれるんだ?一応は酒呑童子の子供だろう?人間の血も引いているとはいえ、ミチカさんは酒呑童子の味方だったのに」
「…………ムカつくんだよ。頭のネジがブッ飛んだのか何だか知らないけどさ、他人を人形扱いして、人生メチャクチャにしてんのがムカつく。んで、そんなバカにいいようにされてるクソ親父もムカつく」
体も心もその持ち主のものだから、特に尊敬している父親が羅刹に操られ抗うことを諦めているのが酷く気に入らないようね。
ナナシ君は本来この世に生まれるはずのなかった存在。父親の酒呑童子は数百年前に死んでいるんだし、ミチカさんと出会うはずがなかった。
鬼の頭に惚れ込んだ人間と、死後の世界から無理矢理強力な力で召喚されてしまった鬼との間に生まれた子供。
それに、いくら理性がなかったからとはいえ生まれるために母親を殺し食らったのだから。彼は復讐するために全ての元凶である羅刹を倒したい。
でもそこまでの力は晴明様のお力を持ってしても引き出せない。だからあたし達が羅刹を倒すことに賭けた。
刀を構え直し「根性叩き直してやる」と意気込む彼の2色の瞳は光を宿しているわ。決してぶれることのないまっすぐな光。子供ならではの純粋な強い想い。
良い息子じゃない。目を覚まして、その腕で力一杯抱きしめてあげなさいよ。
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