恋人以上、永遠の主人

酒吞童子と茨木童子

８P

「あーあ、残念だぜ、まったく。親父が鬼のナンバーワンだっていうからスッゲー楽しみにしてたのによ。ナンバーツーの茨木童子までそろって、ヘタレかよ」


　誰っ！！？茨木童子の後ろから声がしたかと思えば次の瞬間、あたしの胸を貫いている腕が断ち切られた。


　突然の背後からの攻撃に驚き目を見開く茨木童子は横に跳び退き、いつの間に近づいたのか気配のない救世主を見た。


　子供。小学校高学年か中学生くらいの、男の子。でも、右腕の肘から先が赤黒い鬼の腕。そこから延びる爪で茨木童子の腕を斬ったのね。滴り落ちる黒い血を振り拭う。


　鬼……なの？でも、助けてくれた？というかちょっと待って、今「親父が鬼のナンバーワン」だとか聞き捨てならないこと言ったわよね？


　それって、もしかして、もしかしなくてもこの子って――


「ハッハッハッハッ…………すでに手をつかまれているのに己の手を取れという、やはりお前は面白いな、マクベス」


　マクベスの中から声が聞こえた。よく知っている、懐かしい声。その人はもう片方の手もマクベスの中から出して、チョイチョイと手招き。


　さっきの男の子が「はいはーい」と飛び出すと一瞬でマクベスの横に。左手で青白い手をつかむと、一気に引っ張り出した。


　も、もう、もうわけがわかんない！！ヌッとマクベスの中から出てきた、全身青白く光るその人は酒吞童子から手を離しヌラリとあたしの方を向く。