恋人以上、永遠の主人

酒吞童子と茨木童子

７P

「あんた達の想いはそんなもんなの？この世界が、人間が好きだから、生まれ変われたら人間として生きてみたいって言ってたじゃない！諦めが早すぎるのよ、この…………根性なしっ！！」


　聞こえなかったなんて言わせないわよ。闇にのまれた茨木童子が、鎖を巻かれた首を伸ばして顔を上げた。よどんだ銀色の瞳にあたしの顔が映る。


　酒吞童子と茨木童子が生まれ変わるならあたしも、生まれ変わった２人と同じ時間を近くで生きてみたい。もちろん晴明様の嫁として、欲を言うならマクベスも、鬼死団の皆も一緒に。


　本気でそう思った。ううん、叶うまで本気でそう願い続ける。争いなんてない平和な世界で、もう１度。


「確かに羅刹は強大だ。だが、ここで折れたままだと晴明様との約束を破ることになるぞ。抗おうという強い想いが、俺の心を燃やした熱い炎が再び燃え上がるのなら。俺の手を取れ、酒吞童子ッ！」


　とんでもない握力で首がミシミシ悲鳴を上げるのも、爪が刺さって血が流れ出るのも気にしない。マクベスは渾身の頭突きを酒吞童子の額にお見舞いした。


　マクベスもマクベスなりに酒吞童子と心を交わしている。今も昔も敵だけれど、笑いあえる友だから。


　羅刹なんかの手に落ちてしまった、くやしさ。諦めてしまった、怒り。友としての、激励。


　すごい音がしたわ。仰け反った酒吞童子はマクベスの首から手を放し、その右手を青白くほのかに発光する細い手がつかんだ。


　え、青白い手っ！？誰の手？マクベスの手は拳を握ったまま酒吞童子の左手につかまれているし。