恋人以上、永遠の主人

開戦再び

５P

「……ミチカちゃん……や、ミチカさんか。死んだんだってな？鬼の子供を産んで」


　アキラさんに背を向けたお兄ちゃんはあたしに向き直ると、そう呟きながらあたしの頭を撫でた。あまりにも突然で「何よ」って睨むこともできなかった。


　そのままお兄ちゃんはフェンスの際まで歩いて行き、右手を上げた。あたし達に背を向けているからどんな顔をしているのかはわからない。


　風が吹いた。掲げられたお兄ちゃんの右手から真っ赤な炎が生まれ、温かな風が炎を包み込むと弾けた。


　それは赤いバラの花びら、のように見えた。ヒラヒラと舞い散る赤い花びらのように見える火の粉はまるで、亡くなったミチカさんに手向けられた花。


　器用なのよ、お兄ちゃんは。あの天才魔術師の弟子なんだもの。剣術ではマクベスが１番弟子でも、魔法ではお兄ちゃんが１番弟子。


　綺麗だわ。炎でできた花びらも、それを作り出して風にあたしと同じ色の髪を弄ばれるお兄ちゃんも。全然、いつものお兄ちゃんらしくなくて、綺麗。


　遠くを見つめるお兄ちゃんは炎が消えると手を下ろし「さようなら」を告げた。


「で、ミケオさんは羅刹の一部についての情報はアテがあるんだよねぇ？それってい――ブハァッ！」


「てんめぇ、このわしを男みてぇな呼び方すんなってあれほど言ったじゃろうがぁ？忘れたって言うのか、あぁ？なんなら２度と忘れられぬようその体に直接教え直してやろうか、昔みてぇによぉ？」


「思いっきり男じゃんか！ミケオって、グゥッ！呼ばれたくらいで本性出すんならまだまだ、ぜんっぜん女になりきれてねーんじゃねーの！？なぁミケオさ、ウギャッ」