恋人以上、永遠の主人

ハーメルンのホラ吹き

１０P

　休戦だとか言って、ごくまれに晴明様とお酒を酌み交わした時だってあるし。夜桜が綺麗に見える、雲のあまりない満月の日だったわ。


　お屋敷に酒吞童子と茨木童子が来ていることを他の人に気づかれないように、わざわざ晴明様がお屋敷に結界を張って、縁側に腰掛けてお酒をすすっていたの。


　茨木童子とあたしはとっても居心地が悪かったなぁ。けれど和やかに、笑い交じりに話しながらお互いの盃にお酒を注いでは飲む２人を見ていると何も言えなかった。


　だって、まるで２人が古くからの親友のように見えたんだもの。それにほろ酔いの晴明様に「お前もこっちへおいで」なんて言われちゃったら、断れないわよね。


　鬼は悪さをして人に嫌われ滅される。そういうものだと思っていたのに。


　確かに悪さもたまにするけれど、彼らには彼らなりに生きている。その生き方はさほど、人間と変わらない。


　もしかしたら鬼や妖怪でも全てを滅する必要はないのかもしれない。人間と共存したり、同じ世界のどこかでひっそりと暮らしていけるのかもしれない。


　なんて、思ってしまうのよ。けれどあたし達永久の鬼追いは、鬼を発見したらすぐに滅さなきゃいけない。どんな鬼でも問答無用で。


　だってしょうがないじゃない。それがあたし達がやらなきゃいけないこと。あたしたちが生きる意味なんだから。


「……酒吞童子。なぜ貴様が生きているんだ。貴様はあの時、晴明様の呪を受け共に地獄に堕ちると約束したはずだろう？鬼は絶対に約束を違えない、あれは嘘か？」


　それまでずっと黙っていたマクベスが殺意をむき出しに、怒りで彩られた恐ろしい形相で酒吞童子を睨み付けている。