恋人以上、永遠の主人

潜入は慎重に

９P

　小童子は人間のしぐさや言葉を真似る習性がある。さっきの言葉だって、誘拐してきた子供達が誘拐される前に言っていた言葉を覚えて真似していたに違いないわ。


　でも……あたしにはあの言葉が、あの子自身が考えて選んだ言葉のように思えてならないの。


　人間のような意志を持たない、本能のままに生きるはずの小童子が意志を持っていた？生を望んだ？友達を、認識していたっていうの？


　あたしは元の姿に戻って、２人に相談してみた。すると２人も同じことを思ったみたい。


　相手は鬼。人間を食い物にする悪いバケモノ。倒して平和を勝ち取るのがあたし達の使命。なのに、どうしてこんなにも辛いの？


　時代が変わったからって、そんな急に鬼まで変わっちゃうものなの？


「進もう、ナツメ。今ここで立ち止まってまでして考えることじゃないよ」


　マクベスに背を押され、あたし達はまた歩き出した。そんなに大きくはないビルだからあと半分くらい、７階建てだったかしら？


　４階も５階も、子供の姿はなくて出会ったのは全部小童子。マクベスが跳び込んでエクスカリバーと鬼斬り丸を豪快に、かつ華麗に振るう。


　ティンさんは少し離れた所からマクベスの邪魔をする小童子を撃っているんだけど、早くも小童子のスピードに目が慣れているわ。ほぼ百発百中。


　マクベスの背中はティンさんに預け、素晴らしい連携であっという間に倒す。


　どの小童子もがあの意思を持った小童子のようになっているわけじゃあないみたい。餓鬼をそのまま人間の子供にしたような本能で動く小童子の方が多い。