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迫りくる氷山
11P
しおりを挟む電話じゃダメ、実際に会わないといけない大事な情報。それが、彼女が広げてみせた折り線だらけの紙。
「例のビルの中、出てった人影が見えたから写してみた。お2人なら見覚えあるんじゃなぁーいぃ?」
ユエさんが描いたのだという、ハトが見た人物。描かれているのは2人。それはもう写真にほど近いほどのとんでもハイクオリティ。
ゾッとしたわ、2つの意味で。1つは彼女の腕前よね。鉛筆で、しかも即興のはずなのに細部までしっかり描かれている。
その人物をあたしの記憶の奥の底から引っ張ってくるのには時間がかからなかった。
むしろ記憶の方が勝手に出しゃばってきたわ。だってその人物、過去にあたし達と色々あった因縁の人物なんだもの。もう1つのゾッとした理由はそれよ。
「ま、マクベス、これって……まさか……」
「こんな時にユエさんが嘘を吐くとも思えないよ。こんな嘘、描けもしないけど。これが現実なら、事態は思っていた以上に危険なことになっているね」
この絵の人物があの2体の鬼でないことを願いたい。でも、もしも本当にあの2人なら。
寒いわ。寒すぎて体がガタガタ震え始めた。風邪をひいたことなんてないけど、高熱が出たらこんな風に寒くなって震えるの?
あまりの恐怖にパニックを起こしたのか、心臓がこの動かない体から逃げ出そうと肋骨を強く何度も殴るの。不安で不安で、紙を睨み付けるマクベスの手をギュッと握った。
一体どうしてなの?今、この世界では何が起こっているっていうのよ?どうして、晴明様が命がけでその御身に封じた最強の鬼、酒呑童子とその側近の茨木童子が生きているのよ?
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