恋人以上、永遠の主人

迫りくる氷山

８P

「これから……」


「ビルの場所はわかった。俺は部隊を組み作戦を練り、こちらから襲撃を仕掛けるつもりだが。お前自身はどうだ？遠慮はいらん、言ってみろ」


「おいらは………………敵を討ちたい。でも、今のおいらじゃ足手まといになるだけ。だから……待っています」


「除隊の意思は？」


「ありません。必ずまた、団長と同じ戦場で戦えるようになってみせます。どれくらいかかるかわからないけど、義手を付けて以前のように……いえ、もっと強くなります！」


　決意表明しギュッと手を握るラファルガ君と、やっと顔を上げて目を合わせたアキラさん。


　しばし怖い顔で真剣なまなざしを向けていたけど、瞬きもしないで見つめ返すラファルガ君の灰色の瞳の奥に灯った炎を見た彼は「フッ」と笑って手を離した。


　って、もう義手の話をしちゃってるんじゃない。きっとあたしとマクベスが外でじいじと話している時ね。


「義手には何かと金と時間がかかるからな、有給休暇にしておいてやる。頑張れよ」


　ラファルガ君は一時的な戦線離脱を選んだ。その選択で彼は、犠牲になった子供達への罪滅ぼしになればって考えたのかな？


　自分の手で敵を討ちたいって強い気持ちはよくわかるわ。けれど、今の自分にはそうできる力がないって自覚しているから。だから復讐心を鎮めて、もっと強くなることを選んだ。


　自分のために今を生き、自分のために強くなって鬼と戦い続ける。それが、ラファルガ君が出した答え。


　合ってるか間違ってるかなんて誰にもわからないし関係ないわ。大事なのは、その答えに責任をもって選んだ道を進むこと。


　あたしたちもそう。本当に？違うかも、自信が持てない。少なくともあたしは、鬼を討つことが宿命だから、晴明様の命令だからって戦い生きてきた。


　あたし自身は、どうなんだろう？