恋人以上、永遠の主人

動いた山は氷山の一角に過ぎない

１４P

　マクベスのように触れて悟れるわけでもないのに。それだけ、アキラさんはラファルガ君を信頼してるってことなのかしらね。


　ティンさんは「御意」と苦笑して出て行っちゃった。本心ではきっと、目を覚ますまでずっとそばにいたいんでしょうに。


　自分にできることをやる。これ以上被害者が出ないように。彼女は、あたし達の本来の時代――平安時代――に書き記された鬼についての文献を調べる。


　ラファルガ君にはあたし達がついているから。ティンさんはあたし達を信頼してくれているから、任せてくれた。


　今生きている人の中で１番鬼のことについて詳しいのはあたしだけど。あまりにも長い時間を生きてきて、保有している情報の量が半端ないのよね。


　だから知っていても思い出すのに時間がかかることがあるし、単に知らないことだってある。そんな時のための文献よ。


　でもあの時代の文献なんて、今の時代とは文字も書き方も全く違うのよね。国語と古文がとっても優秀じゃなきゃ解読もできないわ。


　ティンさんはできるわよ。あの文献をちゃんと読めるのは鬼死団でも数人しかいない。身近な人で言えばティンさんと、あとはユエさん。


　あたしは当然読めるけど、アキラさんが読めないのよねぇ。意外と漢字も苦手だし？直筆の書面はひらがなが多いの。で、マクベスも実はあんまり得意じゃない。


「あたし達はここで待機ってわけね」


　面倒な鬼、大型鬼の出現に備えてあたし達３人はここでラファルガ君の目覚めを待ちながら待機。たぶん、ユエさんも一仕事終えて帰ったまま下りてきてはないでしょうね。