恋人以上、永遠の主人

那月

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動いた山は氷山の一角に過ぎない

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 ラファルガ君の失った右腕は戻ってこない。たとえ戦えなくなっても、生きているんだから。彼が目を覚ましたら「よく生きて戻ってきてくれたわね」って目一杯褒めてあげなきゃ。


 彼だって辛いはずよ。右腕を失ったことだけじゃない。脱出に時間がかかってしまったこと、多くの子供達が犠牲になったことも自分のせいにしちゃうような子なんだから。


 力を抜いて、優しい声で「大丈夫、ありがとう」って微笑んであげることが大事なのよ。


「ナツメは強いよ。ずっと一緒にいた俺が言うんだから間違いないさ」


「クスッ、何よそれぇ…………ふう。それにしても、晴明様ってほんっとーにすごいお方よね」


 あたし達、なんだかんだ言って晴明様に救われてるわよね。授かった力もそうだけど、あたしは夢で本人に逢って背中を押された。


 晴明様がいなきゃあたし、本当にマクベスのことを嫌いになってたかもしれない。なんて話しながら、手術室の前まで戻ってきた。


 アキラさん、大人しくなってるけど今度は不安でしょうがないみたい。今にもボロボロ泣き出しそうな顔をしてる。


 隣に座って声をかけようと口を開いた時だった。シュッウィーンって手術室のドアが開いたわ。


 反射的に立ち上がったあたし達は出てきた医療班長を囲んだ。すぐにガラガラ音が近づいてきて、移動式の簡易ベッドの上で酸素マスクをつけて眠る彼の姿が見えた。


「っ!……翁殿、ラファルガは……」


「心配せんでよい。右腕はどうにもならんがじきに元気に退院できる。本人にまだ鬼死団を続ける意思があるんじゃったら、義手を勧めるがの」


「義手、か。落ち着いたら聞いてみます。ありがとうございました」


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