恋人以上、永遠の主人

那月

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ナツメと安倍晴明

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 心の中が悲しみで満ち溢れ、熱い涙がこぼれ落ちた。落ちた涙は口を塞いでいる晴明様の手の平を伝い、手首から腕の奥へ。


「お前は、それほどまで………………お前の“想い”はよく理解しているさ。だが、私はその強い“想い”を受け入れられる人間ではない。許せ」


 許さないわよ。そう言いたいのに、彼の手の平が邪魔をして濡れた目で睨み付けることしかできない。


 一瞬だけ、ハッと驚いたように見えた。でもすぐに目をそらして眉根が寄せた晴明様は、あたしの心に何を感じたの?


「もう時間だ。なに、またいつか夢で逢える。ナツメ。マクベスと向き合ってやってくれ。1度でいいから、あいつの話を聞いてやってくれ」


「いっ嫌よ、行かないで、消えないで!晴明様ッ!!」


 お屋敷が、あたりの景色がぼんやりかすんできた。あたしの夢なのに、思うようにいかない。好き勝手出来るのは晴明様だけ。ほんと、何なのよ。


 どうして晴明様はそんなにもマクベスに肩入れするの?あたしよりも得体のしれない外国人のマクベスの方が大切だっていうの?あたしとマクベスをくっつけたいだけ?未来に希望なんてないのに。


 晴明様は立ち上がりあたしを突き放し、後ろ向きにしたかと思えばトンッと背中を押した。


 慌てて叫びながら振り返り晴明様に手を伸ばそうとしても。彼は、首を横に振って略式を結んだ右手を振る。


 見えない空気に体当たりされた。後ろにこける。瞬間、あたしの目の前に広がる世界が変わった。見慣れた天井。


 明るい世界。戻ってきちゃったんだ、現実世界に。


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