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ナツメと安倍晴明
7P
しおりを挟む夢の中で壊したあたしの心を元に戻すなんて。ほら、また感情が戻ってきたじゃない。悲しい。切ない。寂しい。晴明様を失って芽生えた感情。
「ナツメ」
晴明様があたしの頭を優しく撫でながら、柔らかい声であたしの名前を囁く。安心する。フゥと力が抜けて身をゆだねてしまう。
あたしは晴明様が好き。式神としてのご主人とかじゃなく、一生添い遂げたいと本気で初めて思ったお方よ。
本来なら有り得ない、恋愛感情が芽生えたのも晴明様のおかげなのに、芽生えてすぐ死んじゃうんだもの。やり場のない感情が溜まりに溜まって、大きく大きく膨れ上がってパンッ!
「もう……もう、いなくならないで。マクベスなんかじゃなくて晴明様が永久の鬼追いになればよかったのに。そうすればあたし――」
「それではいけないんだよ。あの時私が死んだこと、ナツメとマクベスが私の遺志を継いで永久の鬼追いになったことも全て、運命なのだから。これは――」
「最初から決まっていた、そう言うのね」
「私は星を見て未来に起こりうる事柄を知ることができる。完璧ではないがな、大抵のことはわかっていた。だから抗おうとはした。が、実際はこうして夢で逢うことしかかなわなんだ」
他人の夢に干渉して逢瀬って。それ自体、天才陰陽師の晴明様にしかできない。あたしが彼の式神という強いつながりがあるからこそ、できること。
未来を変えるには、それなりの犠牲がつきもの。それをわかったうえで、晴明様はこうしてあたしに会いに来てくれた。
何を見たの?晴明様が動かなければならないほどの、恐ろしい事が起こるの?それとも、何か別の理由が……?
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