恋人以上、永遠の主人

主人マクベス

１８P

　殺し方は人間と同じ、首を斬ったり心臓を刺し貫いたりすればいい。そうすれば“今回のマクベス”は死んで“次のマクベス”が転生、どこかで生まれる。


　そうすればドラゴン化の恐れは消えなくても、次の発作までの時間は稼げる。


　今までの転生と違うのは、あたしがマクベスを殺したという事実。マクベスを殺したらあたしもすぐに死んで転生しないと、生きる時間が合わなくなるし。


　精神的にも現実的にも難しすぎるわよ。でも、それしか方法はない。わかってるわよ。


　嫌でもやらなきゃいけないって頭ではわかっているのに、あたしの体は動いてくれない。うなずくだけでいいのに、彼の金色の瞳から目が離せない。


　言うことを聞かない体はガタガタ震え、心臓がバクバク高鳴って目が熱くなる。見る見るうちに涙があふれてきて、ツウと頬を伝い落ちた。


　だって、何よりも嫌なのは。大切な人を自分の手で殺さないといけないから。大切だから、できるわけないの。


「怖い？悲しい？でも君ならできるよね。ナツメならいざという時に感情を、心を壊して“やらなければならないこと”だけやり通すことができる。これは“主人命令”だよ」


　マクベスは少し怒気を孕んだ声のトーンを落とし、冷たい目であたしの青い瞳を見つめる。


　そうよ。あたしは自分で心を壊せる。何も感じない、ただ任務を遂行するだけのモノになることができる。ううん、元々がそうだったの。


　怖い。あたしの肩をグッとつかんで「できるよな？」と、さらに顔を近づける。