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主人マクベス
6P
しおりを挟む何かから逃れるように激しくもがいた彼は「ハッ」と目を開きあたしを凝視。今まで見ていたものが夢だと気づくといきなりガバッと起き上がって力一杯抱きしめる。
震えている。ガタガタ震えて、荒く熱い息を何度も吐いて、あたしの名前を何度も呼ぶ。
それほど怖かった悪夢。あたしは夢なんて見ないからわかんない。熟睡して見れないんじゃない、元々見れない体質のようなもの。
落ち着いたらどんな夢を見たのか、教えてくれる?ううん、絶対に教えてくれない。何度か聞いたことがあるんだけど、話してくれたことは1度もない。
力のない唇の隙間から漏れ出る言葉は「とても怖い夢」とか「恐ろしいもの」とか。あとはすごく小さく、消え入りそうな声で「あんな未来になんかさせない」って。
だから多分、マクベスにとって心底恐怖するような未来の夢を見ているんだと思う。そんな未来なんて阻止するわよ、あたしも頑張るから。
「もう大丈夫だから。どんな夢を見たのかは知らないけど、あたしもマクベスもちゃんと生きてる。これからマーボーナス丼を、一緒に食べるのよ」
マクベスがこんな風に悪夢にうなされるのは、過去に何度もあったわ。過去っていっても100年以上前だけど。あたしがそばにいない昼寝の時とかが多かったのに。
そのたびにあたしは取り乱すことなく彼を抱きしめ、背中と頭を撫でながら優しく「大丈夫よ」って囁くの。
最初はビックリしたわよ?でも、混乱しているだけだってわかったらとにかく彼を現実と向き合わせて“今”を認識、大丈夫だって、落ち着かせようって決めたの。
マクベスはあたしがいなきゃダメなんだから。あたしは、マクベスがいなきゃダメなんだから。なんにもできないんだから。
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