ユキ・シオン

ユキ・シオン

２P

　到着したのは、２階建ての真新しい家が建っている近くの公園。小さな公園の脇に車をとめて、真新しい家の前で足を止める。


　ここは、ばっちゃんの家があった場所。俺が悠一の家で暮らすようになってすぐ、ばっちゃんの家は取り壊してもらった。だから当時の名残なんて、庭の大きな柿の木だけ。


　大きな柿の木は根が張りすぎて、引き抜くと隣の家に影響が出るからと残しておいた。新しく家を建て住んでいる家族が、毎年柿の収穫を楽しみにしてくれているらしい。


「擬人化する前、白猫の時によく登ってたなぁ。木の上で寝てて、ばっちゃんが慌てて探してくれてたっけ」


「シオンは今でも、木に登るのが好きだよな。保健室横の……何かわからない木に登って、俺が気づくのを待ってたりしてただろう？」


「あんた、いっつも気付くの遅ぇんだよ。結構見えるとこにいんのにさ。パソコンに弄ばれて、女子生徒にも弄ばれて、さ」


　あんまり他人の家の前で長居していては不審者だと思われるからと、５分くらいで車に戻った。


　すんげぇ年季の入った、けれどばっちゃんの旦那さんが１人で建てたのだという木造の家。古くてホコリ臭い、タンスのショウノウの匂いがキツイ家だったけど。


　春にはお隣の桜の木を眺めながら、柿の木の下でばっちゃんの手作りの桜餅を食べて。近所の子供が、この前まではヨチヨチ歩きだったのにもうランドセルだとか一緒に笑って。


　夏には縁側で冷たいアイスを食べながら、遠くで聞こえる打ち上げ花火の音を聞いてどんな花火が上がっているのか一緒に想像したり。