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それぞれの暮らし
5P
しおりを挟むでももう、目が離せなくなっている。
悠一は頭の上にハテナを乗せて、ずっとジーッと見つめ続ける直也に首をかしげる。そして、何を思ったのかニコッと笑った。
「うっ!?あっ!く、っ……そ、んなの……はぁっ、反則だろ、最悪……っ」
「轟木君!離れて、ほらっ……ネコヤンさんを見ないで、僕を見て。ゆっくり深呼吸。そう。そしたらこれを飲んで。前よりもすぐに効いて、キツすぎないはずだから」
聞こえた。ズッキューン!ってさ、よく漫画やアニメなんかであるやつ。ハートを射貫かれちゃったやつ。
直也の我慢を一瞬でうち砕いた、悠一の笑顔。思わず仰け反った直也の顔は真っ赤に染まって、グンッと背中を丸めると胸を押さえて顔をゆがめる。
駆け寄ったソランさんが直也の腕を引いて下がらせ、椅子に座らせる。直也の視界に悠一が入らねぇように前に立ち、改良したんだというカプセルを飲ませた。
直也のそばにドクトルもしゃがんで、顔を見ながら手首をつかんで脈を測ってんのか。
ソランさんはボードに挟んだ紙にペンを走らせ、時間を確認する。カプセルを飲んだ直也は心を落ち着かせる呼吸法を繰り返す。
最初の薬、効きすぎてブッ倒れちまったもんな。でも今回のは大丈夫そうだ。徐々に直也の呼吸が落ち着いてきて、目を開いた。
もう薬が効いてきたのか?ソランさん越しに悠一をチラッと覗き見て、直也が驚いた。
「えっ、すごい。全然平気なんだけど。苦しくないし、熱くもない。引っ張られる感覚もない。すごいですね、天才ですか?」
ガチで驚く直也に、ソランさんはキョトン。そりゃあ、素で「天才」とか言われたらそうなるな。
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