ユキ・シオン

肉食と草食と雑食と昼食

１０P

　俺ももう食べ終わるが、シオンとホルスタイン女はもう少しかかりそうだな。


　なら、せっかちな高宮が早く帰りたがるはずだ。むしろホルスタイン女を置いて――支払いくらいはするだろうが――先に帰ってしまうか。


　ほら、組んでいた足を直した。と思ったら、逆に組み直しただけ。あれ、席を立たない？俺が隣にいるから？いや、それなら突き飛ばすな。


「……なんだ？さっきのことなら俺様は謝らないからな。違う？なら、この女のことか。心配するな、脂肪の塊のような牛なんぞ喰わん。それにこいつはセンスがある、次の展覧会にはこいつのアイデアを使う予定だ」


　ジィーっとずっと見つめていたら、舌打ちをして高宮が振り向いた。


　俺のキョトン顔に溜め息を吐き、取り出したスマホの画面に視線を落とす。意外だが、やっぱりさっきのことを気にしていたんだな。


　最後の味噌汁を飲み干してチラッとスマホの画面を覗き込めば、今月のスケジュールに何か書き込んで。毎日、ビッチリ埋まってるな。それから、着物のデザインの画像を開く。


　しかも、細い銀縁のメガネをかけているとか。高宮がメガネをかけている姿を見るのはレアだな。


「いや、そんなことまでは考えてなかったが。まぁ、安心した。お前、ちゃんと部下を評価しているんだな？」


「なっ、違うのか！？くっ…………き、聞かなかったことにしろ。貴様も、さっさと食え！仕事に戻るぞ！あと３分で食わなければ貴様の仕事を１０倍に増やしてやるからなっ」


　ドンブリの中、残り５分の１に対する３分という優しさ。それで脅しているつもりか？顔が真っ赤だぞ？