ユキ・シオン

肉食と草食と雑食と昼食

８P

　肉が見えない。ミニトマトや赤と黄色のパプリカ、レタスなどの葉っぱ類が生のサラダとして埋め尽くしている。かかっているドレッシングはポン酢か？
 

　果たしてこれは牛丼なのか？女の子は微笑みながら、モシャモシャと緑を口に運んでいく。

 
　チラッと厨房の方を見てみると、なるほどな。やけに俺達の分が来ないと思ったら。高宮が脅したせいで従業員達の誰が持って行くかで話し合っている。

 
　俺、離脱。席を立つとすぐにシオンが「どうした？」と目を向けてくるが手で制し、厨房の方へ。

 
「大人げないツレがすみません。これ、そうですよね？持って行きます。あぁいいんです、ご迷惑をかけてしまったのはこっちなんで」

 
　結局さっきのバイトの子が２つのお膳を手に泣きそうになっていた。カタカタ震える手からお膳を受け取り、軽く頭を下げてから元のボックス席に戻る。

 
　まさか客が自ら取りに来るとは思ってもみなかったんだろう。驚き慌ててはいたが、俺が背を向けるとそれ以上は何もなかった。

 
「おまたせシオン。トイレついでにもらってきたぞ。さぁ、食べよう」
 

「おぅ、ありがと。いただきまーす。あつっ！あふっ……う、うまっ」
 

　そんなに腹が減っていたのか？俺が座るとシオンもすぐに食べ始め、出来立てだから舌を焼いたらしい。白猫だから。俺も猫科だし、気をつけながら食べ始める。

 
「肉増しの大盛りか。肉食の貴様には合っているが……クソガキはもっと食え、細すぎる。それから貴様は論外だ。草食とはいえ、その下の肉を食えば共食いか？」


　もう残り３分の１か。俺達が注文したものを見て、高宮がそんなことを言ってきた。
 

　俺は大盛りだが肉が多め、シオンは普通、そして女の子はやっと野菜が減って肉とご飯が見えてきた。牛丼並盛りの肉が少なめでサラダが代わりに乗っている、女性に人気のメニュー。それが、共食い？