ユキ・シオン

終息と誓い

８P

　でも実は、スマホで誰かと話をしていたんだろ？んで、その相手はきっと最近ドクトルに懐いているっていう犬の擬人化種。
 

　ウィペット犬、だったか？すんげー足が速い犬で、出没しては爆走して事故を起こしまくる“事故マニア”ってあだ名がつけられていたやつ。
 

　まだちゃんと会ったことはねぇけど、俺より若いらしい。早く会って友達になりてぇけどさ、人間への過剰な恐怖心があるからまだダメだって。
 

　だからドクトルが事故の怪我の治療しながら面倒を見て、心の傷も癒しているって。ちゃんと仕事してんじゃん、ドクトル。
 

「クスッ……お利口で、可愛いなぁ子犬ちゃんは」
 

　ほら、笑ってる。若いオスだし、ドクトルが手を出している確率は９９パーセントだな。残りの１パーセントは奇跡。
 

「ドクトル、あんたの出番だ。いじけてないで仕事をしろ」
 

　それに気づけないのが、悠一なんだよなぁ。まったく、鈍感なんだから。見ろ。スマホをポケットにしまったドクトルがジト目で起き上がったぞ。
 

「もーぉ、遅いよぉ。だぁれも吾輩の相手をしてくれないから退屈で退屈で、いつの間にか寝ちゃった、かも」
 

　あーあ、嘘吐いた。きっとさっき笑っていたのは素のドクトルだ。でもまたいつもの変態ドクトルに戻って、ドアを開ける。
 

　俺と悠一の身体検査、同時にするんだってさ。まぁ、そうじゃねぇと悠一が怒るしな。

 
　服はそのままでいいからって、さっそく検査のための部屋に行こうとしたら。ロビーの椅子に座って難しそうな顔をしている笑也がいた。