ユキ・シオン

白からの黒からの赤

２P

「俺にとってはあんな修羅場、どうってことねぇよ。って強がりたいけど。本当はすっげー怖かった。あの蛇ヤローも怖くて、気持ち悪くって。けど何より、シオンさんが傷つけられるのは我慢できなかった」
 

「ハハッ。本当にあんた、俺のこと大好きだな？」

 
「そうだな。……………………俺は、蹴るのが得意だから。キレると見境なく暴力振るって、そんで…………いや、何でもねぇわ」

 
　パッと手を離すと、笑也は俺の上から退いて椅子に座り直す。

 
　ちょっとうつむいて暗い顔になって、けれど軽く首を横に振ると苦笑を浮かべながら顔を上げた。他人に知られたくねぇこと、か。

 
　特別な親友でも、話してはくれねぇんだな。それ、ちょっと寂しいな。なんて見つめていたら。

 
「あっ。悪い、お月さんから電話だ。たぶんエスエスのコミック化についてだな」

 
　って、ケータイを手に病室を出て行った。ふーん。病院だからケータイの電源を切っていたはずなのに、着信なぁ？


　笑也のことはまぁ、擬人化種のトップである香さんも認めてるし。目を離さなければいっか。
 

　枕元にある１冊の本に手を伸ばし、パラパラとめくる。小さい文字の羅列の途中に、男と男の挿絵がちらほら。白黒だが、男の全体の白い範囲がまぁ多い。