ユキ・シオン

ずっと見ていた

１４P

　笑也の口の端がグイッと、嬉しそうに吊り上がった。カバンからメモ帳とペンを取り出してまるでマスコミの記者だが、今はそんな話をするつもりないからな。
 

　今は２人で、シオンの回復を待とう。頭上にある“手術中”の赤いランプを見つめ、早くランプが消えてシオンが出てきますようにと願う。

 
　出てきたシオンの姿が元に戻っていればいいが。そういえば姿が変わったシオンに驚いてはいたが、香さんはシオンのことを「クロノオウ」と呼んでいた。

 
　何かしらの事情を知っているであろう、その香さんは病院に着くなり緋桜の車でどこかに行ってしまった。

 
　見た目だけなら、元の白いシオンの方がいい。若くて透明感抜群のピチピチの白い肌、透き通るほどの純白の髪。吸い込まれそうな大きな水色の、強い光を持った瞳。

 
　白猫の、人間の、俺が大好きなユキ・シオン。黒いからってスミ・クロンなんかに改名するんじゃないぞ？

 
「なぁ。シオンさんとおそろいの指輪、買い直すんですか？猫屋敷さんのは壊されたし、シオンさんは自分で外してしまったし」

 
　もしもシオンが黒猫のままだったら夜見つけにくくなるなぁとか考えていたら。笑也が俺の左手の薬指を突っついてきた。

 
　え、シオンはあの指輪を自分で外したのか？事情を聞いて、納得。そうか、シオンは可愛いだけじゃなく格好良いんだな。


　新しく買い直すかどうかは、シオンと相談。あと、俺の貯蓄とも相談だな。さすがに、そうポンポン指輪を買えるほど俺の収入は高くない。正直、欲しいって言われれば胃が痛む。
 

　そう言って苦笑いを返すと、笑也の口から年齢にそぐわない言葉が飛び出した。