ユキ・シオン

奪う

９P

　そのまま檻の中で大人しくしている、はずだった。数時間後、スッキリ顔の香さんが檻に戻ってくると悠一の姿がない。


　檻でも鍵をかけていなかったから、気分が落ち着いて気分転換に歩いているのかもしれない。けれど、研究所内のどこにも悠一の姿はなかった。


　研究所内を歩いているのを、他の研究員が見ている。どうやら悠一はなくしたらしい指輪を探していたようだが、途中でソランさんに遭遇。


　楽しそうに話をしているのも、被験者が見ていた。けど、その後から誰も見ていない。出て行った形跡も、ない。


「ソラン君の血を飲んでいたドクトルも、わしでさえ行方が分からぬ。この街におれば、登録された擬人化種全員の居所は察知できるというに……」


「じゃあ、街の外に？でも、この街って結構広いですよね。こんなことを言うのは何ですが、香さんが察知できない条件の場所とかってないんですか？」


「………………わからぬ。今まで、そんなことはなかっ…………いや。あったのやもしれん。今まで気づかなかっただけで……」


　緋桜さんから受け取ったコーヒーを――俺達には水で香さんにはコーヒーかよ――口につけて、止まった。


　カップを下ろし、目を閉じる。何か気になることがあるのか考え込んでいるようなので、その間にポカンとしている笑也に説明。