ユキ・シオン

天才小説家、高台寺笑也

１６P

　なんじゃそりゃ。これ、素直な感想。


　物語を思いつくのは突然で、それを忘れてしまわないようにいつもメモ帳とペンは持ち歩いている。物語だけでなく、キャラクターもしかり。


「意味が分からないって顔だな？知りたければ俺の小説を読んでみるといい、すぐにわかるぞ」


　そう言って、笑也はさらにカバンにポイポイ物を入れていく。な、何を入れた？色々突っ込み過ぎて何が入ったのかもわからねぇけど、遠足じゃねぇんだからさぁ。


　半分ほど膨れたカバンを斜めに肩にかけて「よしっ」と、準備完了。


「俺の小説に登場する人達は皆、俺の子供。どんなに年上でも、人外であってもな。俺が産んだ子供、俺の大事な家族ってことだ」


　あ、それは聞いたことがある。作家とか漫画家が、キャラを自分の子供って言うの、それは皆同じなんだな。


　だがまぁつまり。笑也は作者でありながら、自分が書いた小説の中の物語と登場人物を心から愛する。リアルよりもそっちで充実しているってことか。


　それも、ありなのかもな。だって笑也、リアルにそんなに執着がないって顔をしているんだ。


　笑也にとって小説を書く仕事は。それぞれの物語の中で自分が体験できないことを代わりに体感して、笑也を喜ばせ、怒らせ、哀しませ、楽しませる。


　そして笑也を、読者達を幸せにする。まさに天職。まだ笑也の小説を読んでねぇのに、その時点でそれを感じるんだ。