ユキ・シオン

天才小説家、高台寺笑也

６P

　その時点でなかったってことは、自分で外した？俺とのことで絶望して外したのかもしれねぇな。そんで、頭を冷やしてからやっぱりって嵌め直そうとして、無くしたことに気付いた？


「ネコヤンさん、見つけたら１発殴る。大切な恋人との指輪をなくすとか、有り得ない。シオンさんには悪いけど、殴らないと俺の怒りが治まらない」


「大丈夫、俺がまず殴る。殴り飛ばす」


　目が合って、ガッチリ手を握った。芽生える友情。


「俺、ますますシオンさんが好きになったわ。もちろん友達としてな？出会ったの、本当に運命だって思う。今連載中の、アニメ化も決まってる小説を止めてでもネコヤンさんを探すぞ」


「奇遇だな。俺ももっと、笑也のことを知りたいって思ってるぜ。いやいや、それは読まねぇからっ！全部終わったら悠一をブン殴って、そしたらゆっくり話でもしようぜ、３人でな」


「いや、ネコヤンさんに渡してくれ。まだ発売してない新作。なんならサインでも書くか？なんてな、ハハッ」


　何だかいい感じに盛り上がってきて、悠長に友情を深めていたらまた突き出されるピンク色の本。拒絶すればポケットに押し込まれる。


　やばい、悠一が喜ぶ様が目に浮かぶ。まだ、悠一が“えみやん”のファンかどうかなんてわからねぇってのに。


　まぁいっか、って妥協した。顔を上げたら笑也がソワソワしててさ、もうすでに俺と色んな話をしたいんだって感じる。けど今はそんな時間はない、一刻も早く悠一を探さないといけないってわかってるから我慢してんだ。