ユキ・シオン

蛇は卵を丸飲みします

５P

　――寒い。ついさっきまでいた地下の檻の中よりも寒い。


　目を開け……ん？目が開かない。目隠しか。両手は何かに縛り付けられているのか、動かそうとすれば手首のあたりが痛む。


　もしかしてベッドに寝かせられている？足は、特に何もないが毒のせいでビリビリ痺れていて上手く動かせない。それに胸の下あたりがガッチリ固定されているな。


　妙に薬品の匂いがする。千川原が言っていた「誰にも邪魔されない場所」ってことか。


　近くに千川原はいないのか？気配がない。周りから聞こえる音に意識を集中させれば、何も聞こえない？嘘だ。普通、どこかに監禁されていても何かしらの音は聞こえるはずだろう？


　だが、どんなに耳を澄ましても聞こえるのは、自分の心臓の音だけ。ドッドッドッドッ。力強く早くなって、それからガチガチッ。


　寒い。かなり寒い。プラス、怖い。寒さと恐怖で震えて、歯が鳴っている。いい歳したオッサンが震えるなんて情けない？


　俺はこの恐怖、味わうのは２回目なんだよ。視界を塞がれ、体の自由を奪われる。何の音も聞こえない、薬品の匂いが漂う寒い部屋に監禁される。


　昔と全く同じだ。薬品の匂いも部屋の寒さも同じ、ならたぶん俺は、服を着ていない。


　あ、違う。身じろげば布が擦れる音が聞こえるから、今回は服を着たままなのか。それでも寒いけどな。たぶん、冷たい俺の体は嫌だったんだろう。