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檻の中から見える景色
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しおりを挟む俺にとってはとんでもなく難易度が高い。特に、キレずに直也の話をするとか。キレそうになったら自分を殴ろうか。
ところで。ここは寒いな。寒くて、暗くて、頭を冷やして自分と向き合うにはちょうどいい。考えて考えて、俺はやっぱり直也を許すことはできない。
きっと、シオンも考えは変わらないんだろう。それでいいって思う。
俺とシオンの立場が逆転すれば、お互いの想いがよくわかると思うしな。どうしても譲れないものがあっても、愛し続けることはできる。
だから、シオンに謝る。心も体も、酷く傷つけてしまったから。痛い、怖い思いをさせてしまった。
冷たい、檻を握る。ここにいれば安全だ。けれど、指輪もシオンも探しには行けない。ここから出れば、あとは全て自己責任。
千川原に見つかる、危険を冒してでも俺は外に出るんだ。まず、檻の外に出る。
分厚い扉に手をかけて、体重をかける。キィと音を立ててゆっくり扉が開き、俺は外に足を踏み出した。階段を上り、1階へ。
車に乗ってから檻の中までは眠っていたから、研究所内のどこを通ってきたかはわからない。1階より上ではないことは確かだが、なにぶんここは広い。
まずは、出入り口に向かって行ってみよう。心なしか温かい、1階の空気。白衣を着た研究者や、入院患者が着るような簡易的な服を着た被験者とすれ違う。
昔俺がここにいた時に馴染みだった被験者仲間に声をかけられ、足を止める。懐かしがられたが、昔話に花を咲かせている時間はない。
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