ユキ・シオン

檻の中から見える景色

２P

　シオンと喧嘩をして逃げられた後、香さんから電話があって呼び出された。


　言われた通りに大学の裏に行くと一瞬で車の中に引き込まれ、拉致も同然。特別製の麻酔を打たれて眠らされ、気付いたらこうなっていた。


　俺の魅了の力に当てられて呼吸を乱しつつあった緋桜が、渋々部屋から出て行った。


　油断をすれば俺の方へとフラフラ足が進んで、香さんが止めなければ今頃檻の中だったな。俺に襲う気はないんでな、そこは大丈夫だが。


「せめてしゃべれるように、人間の姿になることはできんのか？それでは力が強すぎて近づけぬ。よって、おぬしから記憶を読み取ることもかなわんわ」


「グゥルルルル……」


　無理だ。体がだるくて、上手く力が入らない。この姿になったのは直也の時以来だな。


　香さんに呼び出された時には気づかなかったが、あの時俺は精神的に弱っていてすでに擬人化が解け始めていたらしい。


　なので完全に巨体のライガーに戻ってしまう前に麻酔を打って止めた。この檻に着くと麻酔が切れ、あれよあれよという間にライガーに戻ってしまったというわけだ。


　しかも、１度自分で魅了の力を解放してしまったせいで弱りきった精神では制御することができなくなっている。


「はぁ。まるでおぬしと出会った当時を見ているようじゃのぅ。このわしでさえ心揺さぶられるほどのその強い魅了の力、惚れ薬にでもなればよいのじゃが。また、わしがこの身で清めねばならんのか……」