ユキ・シオン

からみつく

８P

　俺、猫なのにギャンギャン吠えてんな。こんな、大爆発状態で心電図なんか測ってみろ。俺の心情をそのままにした、デザインで受賞できるくらいの荒れ狂った線が書き上げられるんだ。


　タイトルをつけるなら“愛情～嫉妬に狂うとこうなります～”ってか？はっ！研究所のロビーにでも飾ってみせろよ。


　あーあ、俺がここまで嫉妬に荒れ狂うなんてな。自分でもビックリだ。ソランさんとしてはここまで怒られる筋合いはない、って感じだよなぁ。


　悠一もヘタレだからさ。俺を抱きしめてはいるものの何て言葉をかければいいのかわからなくて困り果てているようで、俺とソランさんを交互に見つめるだけ。


　冷静な俺、大噴火中の俺をブン殴るかして黙らせてくれ。なんかもう、吠えすぎて収拾がつかなくなってきたから。


「うーん…………落ち着くまで、白猫状態での身体測定でもするか。深呼吸して、大人しくできる？」


　何をしようとしたのか、ソランさんの手が伸びてきて。パシィンッ！と叩いた。


　嫌だ、俺に触るな。俺に触らないで検診なんかできないってわかっているけど、拒まずにはいられなかった。俺を見つめるソランさんの２色の瞳に、直也と同じものを感じたから。


「なんだよッ！悠一がガタガタ震えるほど怯えるからどんなやつか心配してたのに。どんな怖いやつでも俺が悠一を守るんだって思ってたのに。そっそんな、仲が、良さそうにして、さ……っ」


　だめだ、我慢ができない。後ろから俺を抱きしめている悠一の腕にしがみついて、押し殺そうとしても目から悲しみがあふれ出てくる。


　声は震えるし、怒りよりも虚しくなって。こぼれ落ちる悲しみが悠一の腕を濡らす。