ユキ・シオン

ネコタチ

１０Ｐ

「…………これは、悠一にも言ってないんですけど。ライガーの姿の悠一に触れたら、意識が飛びそうになりました。とんでもなく強い磁石みたいに強く惹き付けられて、あの金色の瞳から目が離せなくなって」


　あの時は、悠一の“魅了”と“心を奪う”力が恐ろしいと思った。素直に、怖かった。


　ほんのわずかでも気を緩めれば力に喰われて俺が俺でなくなる。そして、悠一は深く傷つくんだ。やっぱり全てをさらけ出すことはできないんだと。心から愛する恋人でさえ、喰らってしまうんだと。


　誰よりもその力に怯えているのは悠一だ。今まで何人もの心を奪って傷ついてきたから。それでも悠一は俺を信じて、ライガーの姿になってくれた。


　嬉しかった。信じてくれたから俺も悠一を、そして自分自身の心を信じられた。だから、耐えられたんだ。


　俺以外には耐えられねぇって、俺だから耐えられるんだって自信があるぜ？最強の香さんでもきっと、ずっとは耐えられない。


　多少の隠しごとはあってもお互いを心から愛し合い、信じ合っているからこそ。深く繋がり合っているからこそ、俺達はお互いに素になれる。


　体に不調はない。あの日以来、たまに悠一は調子に乗るとライガーになって俺にちょっかいをかけてくるようになった。


　が、正直、身の丈を考えてほしい。なにせ全長約４メートル、体重はおよそ４００キロ。俺、ただの白猫。


　全てがデカいし重い。手加減はしてくれているんだろうが、あの姿で擦り寄られれば押し付けられて痛いし。大きな舌で舐められれば気持ちいいどころか、荒いヤスリのようで皮膚が擦れる擦れる。


　俺が我慢できずに「痛ぇよバカッ！」って、白猫になって全力で逃げるとやっと自覚して。それで、部屋の隅で膝を抱えて落ち込むんだ。子供だろ？