ユキ・シオン

準備体操よーい

１３Ｐ

「シオン。お前今、すっごく俺に失礼なことを考えてない？エッチが下手なんじゃないかとか」


「んにゃっ！は、はぁ？んなこと考えてねぇよ、ばぁーか！急にそんなことを言い出すってことは、下手なのかよ？なんなら俺がイかせてやろうか？」


　き、気付かれただと！？ばっちゃんといい悠一といい、もしかして俺ってわかりやすいのか？


　寝室へのドアの前で足を止めた悠一が顔をうずめる俺の耳を噛んだ。クソ、変な声が出たし。目の前に見えるドアに心臓が跳ねる。


　気を紛らわすように、それと仕返しに悠一の耳を引っ張って耳元で囁いてやる。


　ネコヒメで習得した技、わざと艶っぽく色気たっぷりに。そしたら悠一が真顔になった。あれ、もしかして怒った？


　冗談のつもりだったのに。悠一なら気にしないと思ったんだが、タチのプライドを傷つけてしまった？


　何も言わねぇし。もしも万が一本当に悠一が下手くそで、プライドを傷つけて怒らせてしまったんなら。この後の行為がヤバいことになるか、ナシになるか。


　爆音を轟かせていた心臓がズキンッと痛んだ。急に不安になって、笑顔を保てない。


　それだけは嫌だ。謝る。耳から手を離し、甘えるように悠一の首元に頬をスリスリしながら「ごめん、冗談だから」って言おうとした。


　その時、ギィッとドアが開いた。中に入って後ろ手にドアを閉め、なぜかカギまでかける悠一。


「っ……な、なぁ、怒ってんのか？さっきのは冗談だし、もし嫌な思いをさせちまったんならあやま――」