ユキ・シオン

待ち望んでいた

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　いなり寿司の大皿を１皿空にして、次の山からヒョイヒョイと５つ小皿に盛る香さんが神々しく見える。悪い顔も見えるんだけど。


「そういえば香さん、直也をどうするつもりで？」


　本当にそういえばだな。この人、どうやって鉄壁の守りがある直也を牢屋に入れたんだよ？


　そのお力をいかんなく発揮してだろうが、意外にも香さんは「わしはただ、あの両親を黙らせてネコヤン君の動画を編集したまでじゃ」といなり寿司に顔をほころばせる。


　直也の両親を黙らせたって、怖いこと言うなよ。ん、動画？


「お前が直也達に２回輪姦されていた時、動画を撮っていただろう？あれを奪っていて、香さんに頼んで上手いこと編集してもらった。俺は機械は苦手でさぁ」


　いや、機械が苦手だとか言う話じゃなく。この人達に人間の法律は通用しねぇんだなって痛感した。


　その“上手いこと編集された動画”を証拠に直也を突き出して有罪判決にさせたってことか。さらに香さんは直也の両親の精神をいじったらしいが、耳を塞いだ。


「直也は待ち望んでいたんだ、罰せられることを。だからどんどんエスカレートして、見つかるようにしてさ。これであいつも、一息つけるだろ」


　眩暈も治まってもう大丈夫だからと先生から離れ、８つ目のいなり寿司を食う。ヤバ、美味くて食いすぎそう。


　直也にはちゃんと家族がいて、友達がいて、けれど孤独だった。なぁ直也。あの時俺が言ったことは嘘じゃねぇから、忘れないでいてくれよ。


　もしも改心して刑務所から出て両親から離れるって決めたら、また友達になってくれるか？