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冷たい体と熱い想い
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しおりを挟む「っ、くっ……ふ、うぅっ、はっズズッ……」
信じたくなかった。ばっちゃんが死んでしまったなんて。でも、いつもの病室で眠るばっちゃんは息をしていなかった。
体中に繋がれていた管やコードは全部外されて、シンとした病室の空気が冷たい。
顔が白い。でもまるでいい夢を見ながら眠っているような、穏やかな表情。触れると、冷たい。死後硬直で体も硬く動かない。
声をかけても、何度呼びかけてもばっちゃんが返事をすることはない。微笑んで、撫でてくれることはもう2度とない。
「う、あぁぁぁ、ばっちゃん、っ……ズズッ……うぅぅ、ふぅ、ばっちゃん……っ」
俺はまだ子供だから。金もねぇし、ばっちゃんをちゃんとした墓に入れてやることもできねぇ。ばっちゃんには、俺以外に死を悼んでくれる家族がいねぇのに。
看護師が言っていた。ばっちゃんは自分の死期が近いことを感じていて、密かに遺書を書いて残していたんだって。
血のつながりはなくても俺は正真正銘の家族。遺産も、ばっちゃんが遺したものすべては俺に差し出す。そして亡くなったあとは、お寺に入れてほしいと。
恩返しのためとはいえ大学にバイトに一生懸命な俺に、自分が死んだ後に面倒をかけたくないからと。
実印と血判が押されていた。なにかと決まりが面倒くさい遺書。ばっちゃんの遺書は遺書としては完璧で、看護師さんは遺書の通りになるよう手続きを手伝ってくれるって言っていた。
そしてもう1通、ばっちゃんは俺に手紙を書き残していたんだ。俺と出会うまでは1人で孤独で、それでもそれなりに暮らしていた。
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