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ユキとシオン
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しおりを挟む「シオン……」
疑問形じゃねぇ。完全に俺がシオンだと、肯定する言葉。どうする?こうなったのも店長のせいだ、と目を向ける。
おい、わざとらしく目ぇ反らしてんじゃねぇよ!入ってもねぇ予約リストを見るな!
「シオン、帰ろう。どうしてもお前に話さないといけないことがあるんだ」
先生はそう言って、俺に手を伸ばす。ただならぬ雰囲気に、周りのお客さんが離れて俺と先生を心配そうに見守る。
お客さんがいる前で俺を「シオン」って呼ぶな。ここでは、この姿の俺は「ユキ」なんだからな。
先生の手は届かない。背伸びをしても届かないとわかって諦めるかと思ったら、キャットタワーの足場に足を乗せただと!?
そして中心の柱をつかんで、登ろうとしがみつく。他に乗っていた黒猫や三毛猫が素早く逃げた。
あいつらみたいな身軽な猫ならともかく、身長180センチ近くある人間の男が体重をかければ壊れる。ましてや登るなんて。
これにはさすがの、素知らぬ顔の店長も驚いて駆け寄る。ググッとしがみつくように後ろから腕を引いて、先生の前に立ちふさがる。
「この子の名前はユキです。当店にも、他のお客様のご迷惑になりますので、恐れ入りますが今日のところはお引き取り――えっ?」
「わかっているよ。全部知っているから、大丈夫。だから………………その子を俺にゆずってください。お願いします」
なんだ、今の?キャットタワーに登ろうとしたのは無意識だったらしい先生が我に返ると、店長に目を向けた。そしたら先生の目が一瞬、金色に光り輝いたように見えたんだ。
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