警察の犬は雨天がお好き

元警察の犬の計画は現役の警察にことごとく崩される

４Ｐ

「――あ、本当にエクレア買ってきてくれたんだ。あっいや、な、何でもない！今日はかぼちゃのコロッケを作ってみましたー」


　家に帰ったら、白いケーキの箱を見せたら聞き捨てならん言葉が聞こえた。


　エプロン姿のミナギは「しまった」と顔にハッキリ書いて、慌ててキッチンに逃げる。バッチリ聞こえたぞ。俺、信用されてねぇんだな。ほーぅ。


　この俺を脅しておいて、しっかり晩飯を用意しているんだからなぁ？最初から、俺がエクレアなんて１番人気のケーキを買ってこれないと思っていたんだろう？ほーぅ。


　俺に「もう少しで完成だから先にお風呂に入っててよ」と風呂を促すが。まぁ、腰抜けの同僚が自分の足に躓いて俺の上着にコーラぶっかけやがって最悪だから風呂に入るけどよ。


　その間に、待ちきれなくてそーっとケーキの箱を開けて、中のエクレアを覗くんだろう？バレバレなんだよ。


　だから、ものの５分で戻ってきてやった。髪は洗わなかったが身体はちゃんと洗ったぞ。静かにキッチンに足を踏み入れれば、ミナギが跳び上がった。


「は、早かったねっ！？ちゃんと温まった？も、もうできるから、柚樹さんはお茶とお箸を用意しててよ」


　冷蔵庫に入れていたはずのケーキの箱が、一瞬にしてミナギの背中に隠された。俺は何も見なかったフリをして「あぁ」と、食器棚の前へ。


　すぐに冷蔵庫が開閉する音が聞こえ、盛り付けに取り掛かるミナギ。クククッ。声が裏返っていたぜ？


　子供より子供っぽい、可愛さ。小さな小さな声で「よし、バレてない」なんて聞こえたけどな、そんなわけないだろ。俺は現役の警察だぞ。課長様だぞ。なんてな。おそろいの箸を並べながら、笑った。