警察の犬は雨天がお好き

那月

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黒い傘

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 今さっきの様子が嘘のようだな。まるで小さな子供のようにテンションマックスではしゃぐミナギ。タピオカ人気、恐るべし。


 蛇行する車を必死になだめ、ミナギを叱ろうと思ったが。だめだな。ずっと輝いていて、笑えてきた。


「藤代さんと一緒に行けるなんて。あ、食わず嫌いはダメだよ?店のメニューには全部タピオカが入っているんだから、藤代さんも、もちろんタピオカを食べるんです」


「げっ」


「絶対に美味しいから!僕が保証する。あ、わかった。僕と一緒だったら、絶対美味しい。なんてね、ニヒヒヒッ」


 マジかよ。あんな得体のしれないもの、俺には一生関係ないと思っていたのに。ワクワク満点なミナギの顔を見ていたら、ミナギへのお礼として付き合ってやるかと苦笑。


 タピオカを食べたことのないやつに美味いって保証されてもな。それにミナギと一緒だったら美味しいって、お前は秘伝の隠し味か?


 きっと俺はミナギのことを半分も知らない。前の飼い主ほども信頼されていない俺に、ここまで楽しそうにしてくれるのか。


 こんなにも弾けた、可愛い笑顔を見せてくれるのか。眩しい。俺には眩しすぎる。


 こんなに眩しくても、ミナギが俺に隠しているものは輝くことのない真っ黒な闇。ずっと俺に見せないように、しっかり両腕に抱えて守っている。


 不思議な少年――もう青年か――のミナギは、一体どんな味がするんだろうな?



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