警察の犬は雨天がお好き

那月

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黒い傘

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 ブラッディバースデーの終息から5年後。


「藤代さん。例の容疑者の女、シロだよ。家のパソコンを調べたけど、もちろん合法でね。完全なアリバイがあった。やっぱり自殺で間違いないね」


 俺は32歳、ミナギは19歳になった。すっかり引き締まって大人の顔つきになったミナギは背が伸び、俺とそう変わらない。


 なにより、モデルになれるんじゃないかってくらいに綺麗になった。目を引くほどの美貌と、艶。


 俺の甥っ子としてたまに職場に来るんだが、女と間違われて俺の部下に口説かれていた。男をそそる、独特の色気、それも本人は無自覚なのが最近の俺の悩み。


「そうか、ご苦労さん。自殺か。若い命を無駄にしやがって。そこまで追い詰めた女も家族も、教師もお咎めなしなんてな」


「誰か1人でも、ちゃんと話を聞いてくれる人がいればよかったのにね。藤代さんなら、説教してでも彼の力になっていたでしょ?」


「あぁ、そうだな。って、俺は相談窓口じゃねぇよ。そりゃあ、警察として相談されれば話は聞くが」


 ミナギが調べてくれたこの事件、高校生の男の子が学校の屋上から飛び降りて死んだ。高校2年生で同い年の彼女を妊娠させ、家族や教師から暴力を振るわれていたらしい。


 しかも彼女も、子供は望んでいなかったと彼を突き放し結構モメていたと。現場の状況からカッとなった彼女が突き飛ばしたのだと思ったが。


 やっぱり自殺だったか。周りに、彼の話を聞いてくれる大人も友達もいない。追い詰められて自殺なんて。


 救ってやりたかった。男の子も、新しい命も。結局彼女の強いストレスで子供は流産だったんだ。


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