アイデンティティ

おまけ

４P

　これがあのギオなのか？わが目を疑いたくなるほど、今俺の目の前にいる男は恋に苦しんでいる。
 

　演技には見えない。シャオリンが任務で初めてクスリを盛られた話は聞いたことがある。ギオが言った通り、帰ってきた時にはまだクスリが抜けていなくて自室にこもっていたとか。

 
　だが、思っていたよりも早く回復してシャオリンは何事もなかったかのように翌日、次の任務に当たったと。

 
　シャオリン本人は「寝ていたら治った」と言っていたらしいし、ギオのことを忘れたのか隠しているのか。

 
　何にせよ、ギオのおかげでシャオリンはクスリの苦しみから早く解放された。ギオに無理矢理抱かれたというショックはあるだろうが。

 
　シャオリンの前では道化師のように冗談っぽく振る舞っているが、もう限界なんだろう。それくらい本気なんだと伝わってきた。

 
「……とりあえず謝っておく、すまん。俺はお前を甘く見ていた。だが、だからといってお前にシャオリンを渡す気はない。たとえこの体で繋がることが、愛することができなくても、心は繋げられる」

 
「そっか、君も本気なんだね。機械の君が心を手に入れ、恋を発病させるほどだもんねぇ」

 
「俺は人間になる。シャオリンと一緒にいれば、いつか本当になれそうな気がするんだ」

 
「僕達、こんなにもシャオリンを愛しているのにねぇ？どうしてわかってくれないんだろう、照れ隠しかなぁ？クスクスクス……」

 
　シャオリンの、マリアンへの本気の想いも理解している。が、照れ隠しだと思いたいな。