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アイデンティティ
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しおりを挟む笑えねぇよ。今じゃ恋人だ。年齢差の壁も性別の壁も超えて、10年間の長いブランクを経てついに結ばれたんだよ。
“急にマリアンが10年後に開けるタイムカプセルを作りたいだとか言い出してな。テレビか何かの影響だとは思うが、あの真紅の瞳は真剣で。手紙なんか書けって言われても何を書けばいいのかわからねぇ。ジャックの成長も気になるし、総長の――”
「書くことに悩んでいたくせに結構色々書いてるわよね、ノル」
「思ったことをそのまま書いただけだ。俺に文章をまとめる能力はない。書類はいつも兄貴がやってくれているしな」
タイムカプセルを作ろうと言い出したのはマリアンが、親に捨てられて別の街の施設に入れられてしまうから。
10年後、大人になったら戻ってきて再会できるようにと強い想いが込められたものだ。それを、記憶喪失になっていたとはいえ俺は忘れていたのか。
頭をポンポンしてやると、マリアンは突然のことに驚くが「大丈夫よ」と微笑む。なんでポンポンされたのかわかってないくせに。
いや、もしかしたら俺の表情から何か感じ取ったのかもしれない。そういうところも好きだな。
俺の手紙の最後には“俺もマリアンも幸せになってくれ”と締めくくられていた。読んで、また2人で笑った。肩を寄せ合って笑った。
笑いすぎて、マリアンが腰を押さえて「いててて」なんて声を漏らすものだから。俺の手紙は閉じて最後、マリアンの手紙へ。
「短っ!お前、これだけしか書かなかったのかよ。俺には紙を押し付けて色々書いておいた方がいいとか言っていたくせに」
「シンプルイズベストよ」
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