アイデンティティ

本当の姿

１３P

　ギオはある目的のために戻ってきた。シャオリンに会うため。今度こそシャオリンの命を奪うため。いや、違う。やつは苦笑しながら首を横に振った。

 
「あいつは中国マフィアを抜けた。自分もシャオリンも死んだことにして、バレねぇよう死体まで用意して出し抜いてやったんだと言っていた」

 
　追い詰めたがシャオリンと相打ちになり爆死。黒焦げ、バラバラになった遺体でＤＮＡ鑑定されてもクリアできるよう手回ししていたようだ。

 
　そしてついにギオとシャオリンは中国マフィアには死んだ者とされた。２人は中国マフィアから解放された。

 
　ではなぜわざわざそんなことをしたのか？なぜ、まだギオはシャオリンを探すのか？

 
「ギオはな、問い詰めてやったら『僕が僕らしく、シャオがシャオらしく生きていくための大事な大事な話をするためさ』と言ったんだ」

 
　何のことかは俺にもアランにもさっぱりわからん。ただ、音もなく俺達の前に現れたやつの雰囲気が今までとは全然違っていた。

 
　何のつもりだよ？お前は何か１つでもマトモにできないのか？そう怒鳴りつけてやりたいほど突飛な登場。

 
　俺が息抜きにボーっと眺めていた窓の外に、逆さで「やぁ、元気？」っていきなり顔を出してきやがったんだ。



　窓の上にあるわずかなでっぱりにつま先を引っかけていたのか、そのまま部屋の中に入ってきて俺の弾丸を全て避けきってみせると土産話を披露。スカーレット・ローズが襲撃を企んでいるって話だ。
 

　違和感、と言って良いのか。いつにも増して嬉しそうで、けれど落ち着いていて纏っている雰囲気が柔らかかった。