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距離
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しおりを挟む庭に行けば何か思い出すか?庭には錦鯉がいる呪いの池と、大きな庭石があるだけだが。
リアが7年前のことをどれだけ知ることができたのか、聞けなかったな。裏の世界では有名な話だ、知っている人も多い。
少し調べれば簡単にわかるだろうが、俺が新たな“約束”を思い出すのとどっちが早いか。
街を抜け、俺のビルへと戻ってきた。アランがちゃんと休んでいるといいが。あいつは人のことを言えないくらい自己犠牲主義者だからな。
ビルの中には入らずに、裏に回って実家の庭だった部分にまわる。池がある。錦鯉が8匹。
餌をくれると思ったらしい赤や黄色の錦鯉が寄ってきたのを無視し、1つの大きな庭石に腰掛ける。
地面から生えているような、高さ1メートルちょいの大きな岩。これに昔はよくガキリアが座っていたな。見下ろすのが好きだったのか。
あいつがしていたようにてっぺんに立って、周りを見渡してみる。ビルの壁と、隣のマンションの壁とその奥にある道路くらいしか見えない。
ビルもマンションもなかったあの頃は、ガキリアの眼にはどんな景色が映っていたんだろうな。
「――はぁ、戻るか。え、うわっ!?」
しばらくそうして周りの景色を眺めていた。しかし昔とは変わってしまったからか何も思い出せず、もう部屋に戻ろうと岩から降りようと足を踏み出したその瞬間。
滑った。俺の足はコケも何も生えていない岩肌をズルンッ!と滑って、世界がグルンッ!と回る。
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