アイデンティティ

那月

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追われる者

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 2人はそれからこの国でひっそりと生きてきた。家を持たず、転々としながら表の世界を必死に生きてきた。

 
 でも、それも長くは続かなかったみたい。マフィアの追っ手が2人を見つけ、抹殺しようとした。アタシが彼に出会ったあの港ね。

 
 セイフォンはいなかったんだけど、あの時彼は別の場所で大勢の追っ手とドンパチやってたんだって。

 
「こいつを海に沈めた奴らの中に、あんたが知っている奴がいるんだぜ?思い出して、誰だかわかるか?」

 
 えっ、そうなの?セイフォンはニヤッと笑い、けれどすぐに真剣な目でアタシを見つめる。赤い右目はもう隠しちゃった。

 
 数年前のことだし、夜だったから顔もあんまり見えなくてわからないんだけど。アタシが会ったことがあるってことは、男ってことはDBってこと?

 
 細い顎に手を当ててあの時のことを思い出す。んー、だめね。やっぱり暗かったしわからないわ。


 アタシが顔を上げて首を横に振ると、セイフォンはつまらなそうに溜め息。あんた達みたいに暗闇でも見える目を持っていたら思い出せていたでしょうね。
 

「正解は、DBに潜んでいたギオだ。あいつは元々、私達のマフィアのボスのお気に入りだった。どうせ、ボスの命令でコイツを殺しに来たんだろ。あんたが助けたから死体が上がらなかったんだしな」

 
「ギオってホモなの?」

 
「は、はぁっ!?ノーマルだったと思うが、必要とあらば男を抱くことも抱かれることもあるって聞いたことがあるぜ?」

 
 へぇ。なんか納得。あのギオがシャオリンと同じ出身の追っ手なら、異様な雰囲気と強さもうなずけるわ。

 
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