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家族の記憶
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しおりを挟むふざけたお経のようなものがそのまんま、文字としてノートに書き綴られている。
漢字の練習の間に数式。数式のプラスとイコールの間に植物の名前。植物のスケッチ画の中に数字と漢字の羅列。こいつの頭の中を覗いてみたいと思った。
どの教科も、時間がないからと同時に勉強していたんだと言っていた。そりゃあふざけたお経にもなる。
この頃から色んな感性がずれていたのかネジが足りなかったのか、ガキリアは人見知りをすることなく、むしろもっと教えてほしいとせがんできた。
俺は大人で時間もない。たまたま外に出て公園の前を通ってヤツの姿を見つければ、立ち寄って声をかける。
そんな日が増えていった。ある日、ガキリアは屋敷の庭に現れた。心臓が飛び出るかと思ったぜ。誰にも気づかれることもなく、池の縁にある大きな岩の上にちょこんと座ってやがったんだからな。
俗にいう不法侵入。そのうえ、俺のあとをつけて家を見つけたんだと。よし、立派なストーカーだ。
もちろん追い返した。俺の家は普通の家じゃない、ヤクザの家だ。子供が能天気に出入りしていい場所じゃない。
だが翌日また登場。そんな気はした。今度は強く本気で叱ってやった、二度と来るなと。
そしたらガキリアは何て言ったと思う?あいつは「お兄さんはオレのことが好きだから」って、本気の眼で言いやがったんだ。
俺がポカンとしていると「オレを嫌わない、優しくしてくれるってことはオレのことが好きなんだよ」と続けて、笑った。
陽だまりのようなあたたかい笑顔。なんで、忘れちまってたんだろうな。
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