moon child

moon child

６P

　受け止めた涙の滴を、彼らは慈しむように優しく握りしめる。


　彼らの体が、淡い温かな光で包まれた。眩しいというわけではない、強い光だけれど、柔らかく優しい光。


「お前達を失うのが、嫌だ。わがまま、だよね、今さら。笑っちゃうよ。私がこんなだから、神楽君をあんな風に苦しめてしまったんだろうね」


　チユニの震える声を掻き消すほどの、大きな爆発音が響いた。体が完全に作り替わり安定したケダモノが暴れ始めたのだ。


　近くにあった大きな岩を叩き壊し、足を踏み鳴らせば隣のビルが震えあがり爆発する。


　腕を振るい巻き起こった暴風は車を吹き飛ばし、電柱をなぎ倒す。あらかじめ、住民達を避難させていなければ今頃どうなっていたか。想像さえも恐ろしい。


　チユニは、口を引き結んだ。バッと立ち上がり、懐から手の平サイズの透明なカプセルを取り出した。


　中には若干灰色がかった白い石。石灰岩のようにも見えるが、そうではなくこれが月の欠片。月のゆりかごの探査チームが月で採取したものだ。


　手の震えは止まり、大きく息を吸い込んだチユニは「頼んだよ」とカプセルをライトに差し出す。


「不思議ですね。初めて見たのに。俺、これの使い方がわかるんです」


　両手でそっと受け取ったライトは、カプセルの蓋を開けて中の月の欠片を手に乗せた。何も知らなければそこら辺にあるちょっと綺麗な石にしか見えない。


「アタマ悪いわいでも、自分がどうしたらえぇんかなんとなくわかるで。せやから、ここでサヨナラや」


「生まれて何年も経っているはずなのに、あっという間でした。それくらい、主がくれた生活は楽しかったです」