moon child

那月

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本物の偽物

14P

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 言葉を使う必要もない、ということか。口元に笑みを浮かべて、両腕を広げて、しかも目まで閉じているじゃないか。馬鹿にしすぎやしないか。


 やがて飽きてしまったらしい彼女は立ち止まる。頬を弾丸が掠り赤い線が入ったと同時に打ち出された、彼女の左目に直進する弾丸を前に腕を伸ばしデコピン。


 素手だ。ピシッと弾かれた弾丸は180度方向を変え、シャノンの眼鏡を突き破った。


 ちゃんとした、シャノンが普段から使っている銃から打ち出された弾丸が、素手の指に負けて弾き返されるとは。何でもありすぎる。


 眼鏡のレンズを突破した弾丸はシャノンの左目から光を奪った。彼が本能的に身をひねって避けたため、間一髪で脳幹直撃は避けたが頭蓋骨に当たって止まった弾丸が頭の中に滞在。


「ハク、ト……主とミレ……連れて、逃げて……」


「面白くない。僕のこと知ってるくせに、全然ダメじゃん。あぁ、それにしてもこの目はいいね。すっごくよく見えるよ」


 月子達8人中6人が、3分もたたないうちに倒された。しかも、ギリギリ死なない程度に力加減をされて。誰1人、彼女に攻撃を当てることも触れることもできない。


 皆、あらかじめライトの記憶を読んだミレイナから聞いていたのだ。神威アーシルが持つ特殊能力の脅威を。


 彼女の特殊能力は“言霊”と言われる、口にする言葉を操るというか具現化する能力だ。シャノン以外に使った攻撃がそれで、直接「死ね」と言うことができないのが欠点らしい。


 最強の、絶対的な特殊能力。それに、今の彼女はそれだけではない。


 シャノンの弾丸を全て見切っていたのは、単純に彼女の洞察力が鋭すぎるわけじゃない。寸前に、どこにどう何発くるのか悟っていた。


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