moon child

本物の偽物

１２P

「私を殺すか？やってみろ。お前達の計画などお見通しだ。月子８人の命だけでは、私は倒せない。ライトも使えぬぞ、お前が月の石を作るのか？いや、お優しいお前にはできまい。クククッ……」


　チユニ達を嘲笑う、神楽の顔はすでにもう神楽の顔をしていなかった。


　アーシルがもう１度３人に「下がれ」と命じると、瞬時に３人はアーシルの隣に並ぶ。まるで、無理矢理引っ張られたようだった。


　中途半端に止められた３人は眉根を寄せて不服を言おうと口を開き、声に出す前に閉じる。


　アーシルがライトの亡骸を月影に預け立ち上がり、１歩前に踏み出したからだ。ゆっくり大きく深呼吸し、レンマを見据える。


「今度は僕達の番だ。油断しちゃあダメだよ、僕は強いんだから」


　瞬間、アーシルの姿が消えた、かと思えばフワリとレンマのすぐ目の前に降り立ち「伏せろ」と一言言い放つ。


　するとドシャッ！とレンマの大きな体が地面に、何も直接触れていないのに叩きつけられた。


　月影のように超重い重力の負荷をかけられているのとは違う、全く動かせない。体が自分のものではない、岩にでもなったよう。


　さながら、ゴキブリホイホイに捕まったゴキブリのよう。うつぶせに地面にへばりついたままうめき声をあげるレンマはその怪力を発揮できない。


　それからアーシルはすぐ横にいるヒロキを振り向き、今度は「飛んでっちゃえ」と指を差した方角にヒロキがものすごい勢いで飛んでいく。


　ヒロキの体は彼女が指を差した先にある瓦礫の山に突っ込み、突き出ている鉄骨がヒロキの胸を背中から貫いた。


　何の抵抗も、声を上げることもできなかった彼は口から大量の血を吐き、鉄骨に貫かれたままガクンとうなだれた。