moon child

本物の偽物

９P

「ライトッ！！」


「兄さんッ！！」


　ハウンド達が獲物という名のライトに群がったのと、月子達が悲鳴交じりに叫んだのと、月影達が手を伸ばしハウンド達を止めようとしたのは同時。


　ライトの姿がハウンド達に埋もれて見えなくなり、代わりに真っ赤な血が噴き出した時、チユニはガクンと膝を突いた。


「そん、な……なんてこと……ライト……」


　瞬時に１００近くいたハウンド達が消えてなくなり、月影の腕に抱かれてぐったりと目を閉じているライトが見えた。


　全身が血で真っ赤に染まり、腕やわき腹、脚などの肉が所々食われている。死んでしまった、のか？


　神楽は冷ややかに言い捨てた。月影達ですら青い顔をしているのに「必要なものは手に入れた。馬鹿なことを考える裏切り者は死ね」と。


　ライトが密かに邪神を倒そうと、未来を変えようとしていることに気付いていたのだ。だから、相手の手に戻る前に殺す。


　神楽は隣でジッとライトを見つめているアーシルの肩を抱き、嘲笑った。


　月影達でさえ聞かされていなかったことのようだ。立ち上がった緋月が涙を流しながら、鬼のような形相で


「あんた達のせいだッ！あんた達が兄さんを取り戻そうとするから、兄さんは俺達の兄さんなのに！あんた達が裏切らせた、兄さんを殺したんだッ！！」


　と吠え、同じく涙を流す那月と共に跳び出した。那月は立っているのも辛いはずなのに、感情任せに動けている。それほどまでに彼らの想いは、強い。


　あまりにも速すぎて姿が見えないが、まっすぐチユニに突っ込み片ハサミを振り下ろす。