moon child

壱号

２P

　ここで小カラスとカラスを襲った犯人だが。傷口から刃物はおそらく１メートルを超える長い超鋭利な刃物。神楽は持っていないし振り回して綺麗に斬りつけることはできない。


　だから犯人は神楽とは別の人物。神楽はさらわれた？それはない。彼は自分が首謀者だと、自ら名乗っている。


「神は存在するのか？私は存在すると思っている。否、存在するのだ。私は手に入れたのだから、本物の神を。何度も邪魔されたがようやくここまで来た。人間が支配する世界は終わりを迎え、これからは神の時代だ。私は神を育てる親として、神が住みよいようこの世界を変える。まず手始めに、しかけておいた爆弾を爆発させてみよう」


　血だまりの中に倒れていたカラスの手に握らされていたボイスレコーダーに、神楽の肉声が録音されていた。


　神だの世界の終わりだの言っているが、どうやら本気のことらしい。ライトは、再生が終わるとチユニの前に立って「俺がその爆弾です」と小さく呟いた。


　うつむいた顔は青白く、肩は小刻みに震えている。夜空のような深い青の瞳は斜め下を泳ぎ、とてもチユニの顔を見られない。


　ライトが人差し指を向ける。窓の外へと目を向けると、隣のビルがドォォォォンッ！！と轟音を響かせ爆発。


　最初に最上階が、次にすぐ下の階が、さらに連続で爆発音が響く。隣は、月のゆりかごの本社だ。窓から真っ黒い煙が上がり、あちこち崩れて傾く。


　なにせすぐ隣だ。立っていられないほどの地響きはするし、悲鳴を上げながら逃げ惑う人達がよく見える。


　ビルだけではない。街の中からも悲鳴が上がり、目を向ければ複数の黒い影と白い影が見える。ハウンドとリンクス。