moon child

那月

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黒いカラス

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「自信ないんだな。チユニさんの願望なんだな。だが己も、ミレイナは危うい感じがするぞ」


「サクマ君まで……」


 ガックリ肩を落とし泣くフリをするチユニをしり目に、サクマは拘束具を付けたままのハウンドを檻の中へ。カラスはちゃっかりパソコンの前に座ってキーボードを叩く。


 すかさずカラスの足元にスライディング土下座して「お願いします、見捨てないで!?」と泣きついたのは言うまでもない。


 俗にいう、馬鹿トリオ。3人とも仕事の面ではとても頼りになる優秀な人材なのに、ちょっとオフになった途端にこうなる。


 結局サクマがハウンドの見張りを引き受け、カラスは超嫌そうに渋々、重たい腰を上げてチユニと共にミレイナがいる部屋に向かった。


 月子達の家である最上階の1つ下のフロアにチユニのプライベートの部屋はある。読書が趣味で、部屋の中にある8つの本棚には色んなジャンルの本がビッシリ詰まっている。


 最上階にまだ空き部屋はあるのだが、何かと不自由なミレイナを1人にするわけにもいかない。だからチユニはしばらく自分の部屋で預かることにした。


 だが元々は1人部屋。ベッドは1つしかないのを無理やり窓際に押しやり、ミレイナのための棚を用意した。


「神楽君、ありがとう。カラスを連れてきたから君はもう休んでていいよ。起こして悪かったね」


「いや……熟睡はしていないのでな、気にするな。カラス、この状態をどう見る?」


 窓際のベッドで横たわり腕を投げ出しているミレイナ。その右腕には10センチほどの切り傷があり、血は止まっているが痛々しい。


 そんな彼女の隣でしゃがみ込み腕の傷を眺めているのは、どこか疲れた様子の男性。


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